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【アイスランド編】平和と平等を愛するアイスランドの人々

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Reported by 桜山
アイスランドを拠点としてグローバルに展開しているIT系企業に勤務。オフタイムの楽しみは、現地の友人とのバー巡り。日本から家族や友達が遊びに来た際には、大型四駆車で旅行に行くことも多い

家や車に鍵はかけない

こんにちは。桜山です。今回は、アイスランドの人々についてお話しします。

 

アイスランドの人々を見ていて感じるのは、平和と平等を愛する文化が社会全体に根づいているということ。その証拠に、実はアイスランドは軍を所有していません。デンマークによる長い統治の後に独立し、第2次世界大戦が始まった後にイギリスが進駐、のちにアメリカが引き継ぎ、2006年に完全撤退するまで駐留が続いていましたが、その後は軍とは無縁なのです。そして、1986年、東西冷戦終結に重要な役割を果たした米ソ首脳会談「レイキャビク会談」が行われたのもアイスランドなら、オノ・ヨーコが2007年に世界平和を祈念して「イマジン・ピース・タワー」を建てたのもアイスランド。そのように、平和を祈り、実際に平和を維持し続けていることを、アイスランド人自身が誇りに思っています。最近、警察が犯人を歴史上初めて射殺する事件が話題になりましたが、逆を言えば、今までそこまでの凶悪犯罪が発生したことがなかったとも言えます。

 

したがって、治安も非常に良くて安全です。首都であるレイキャビクの街中でも、基本的に家や車に鍵をかけることはなく、遅くまで外が明るい夏の間は、子どもたちだけで夕食の後に外に出かけたりすることもごく普通。私にはアイスランド人の恋人がおり、先日、彼女の姪(めい)の誕生日会に行ったのですが、途中でその姪自身が友達を連れていつのまにかいなくなってしまったことがありました。私だけが「探しに行かなくていいの? 結構時間も遅いし、危なくないの?」などとおろおろしていて、周りは「大丈夫。どこかにちょっと遊びに行ってるだけだよ」などとまったく気に留めていませんでした。実際、1時間後に、何事もなかったかのように本人が帰ってきました。

 

また、アイスランドでは、普段から赤ん坊をベビーカーに乗せて屋外に置き、寝かせておくという伝統があり、今でもよく見られる光景なのだとか。「屋外の方がよく眠る」「新鮮な空気が成長に良い」といった理由が挙げられるようですが、実はそれは建前で、昔は家が小さく、子どもも大勢いたので、単にスペースの問題から外に出しておく必要があったということのようです。それが可能だったのも、ひとえに街が安全だったからなのでしょう。また、日本と同様に、ハンターの猟銃や警察のものを除き、基本的に銃は流通していません。とはいえ、レイキャビクでも一部の地域では薬物の売買が行われたり、低所得者が集まる危険な地域はあるようですが…。

 

一方、彼らの「平和志向」については、同僚たちと世界情勢の話などをしている際にも伝わってきますし、過去にNATO(北大西洋条約機構)への参加を打診された際に、アイスランド国民の大半が反対したために参加しなかったという経緯からも、戦争に巻き込まれることに対する強い懸念が国民にあることがわかります。「海外で戦争が起きるたびに、アイスランドは決して戦争に参加することはないのだとあらためて認識するし、安心できる」と知人が話していたこともありました。また、前述の「イマジン・ピース・タワー」では、毎年、オノ・ヨーコ本人がアイスランドを訪れて「Peace Festival」が開かれます。その際、「LennonOno Grant for Peace」と称した平和賞受賞者を発表しているのですが、そうしたお祭りのたび、アイスランド人たちは「平和は当たり前のことなのに、なぜわざわざ平和であることを表彰するのだろう?」と疑問に思うそうです。

 

家族や結婚に対する考え方もリベラル

「平等」という意識も非常に強く、家族や結婚、性に関する態度も非常に柔軟だと感じます。例えば、2013年まで首相をしていたヨハンナ・シグルザルドッティルが自らレズビアンであることを公表していたことからもわかる通り、同性愛に関しても非常にリベラル。法律によって、同性のカップルが結婚しているカップルと同等の優遇措置が得られる制度が定められていたり、1万人前後の参加数を誇るプライド・パレード(セクシャル・マイノリティが差別や偏見にさらされずに生きることのできる社会を目指す運動)がレイキャビク市長によって率いられていることも象徴的です。

 

また、人種差別に反対する国際パレードなども行われ、在アイスランド日本人も多数参加しています。事実、レイキャビクに住み始めて2年になる私も、今まで一度も現地の人に差別的な態度をとられたことがありません。逆に、非常にオープンすぎて、こちらが戸惑うほど。例えば、スーパーマーケットで肉製品ばかりをかごに入れていたら、知らない女性の方から「もう少し野菜を食べないとだめだよ!」とアドバイスしてもらったり、アルコール度の低いライトビールを買っていたら、知らない男性から「それ、普通のビールじゃないの知ってる?」と教えてもらったこともあります。アイスランドの人々が、誰にでも分け隔てなく人懐っこくて親切に接してくれるところは、本当に素晴らしいと思います。

 

結婚や家族に関して非常にリベラルな考えを持っていることは、私と同じ20代の曽祖父母の世代ですら、結婚せずに子どもをたくさんもうけていることからも感じます。異母兄弟・異父兄弟がいたりするのもごく普通で、私にも異父姉妹が2人いる友人がいます。そのため、「離婚」「シングルマザー」に対する偏見や差別はまったくありません。ここアイスランドでは、結婚とは「経済的に有利だから」、もしくは「気持ちの区切り」や「記念で」といった理由で行うものであって、結婚のために規則で縛られるという感覚はまったくないのです。

 

そうした柔軟な考え方をベースに人と人とがつながっていることに加えて、人口が約32万人と極めて少ない事情もあり、街で出会った見知らぬ人が実はいとこだったりすることも多々あります。実際、社内でも、同僚が別の同僚の親戚であることが判明するのは、決して珍しいことではありません。そのときも、果たしてそのコネを使っての入社だったのか、それとも本当に入社してからその事実を知ったのかが話題になり、偶然に驚く人は皆無でしたね。また、私と仲の良い大学生グループの中でも、ある女の子と男の子がいとこ同士であることが最近判明したことがありました。異性と出会ったときに、その相手との血縁関係を調べるためのアプリも開発され、話題になっています。近い血縁関係があるようなら、交際をとりやめるように警告サインが出るというから驚きです。

 

そのアプリのデータ源となっているアイスランドの家系図データバンクは、なんとインターネット上で閲覧可能で、私も一度見たことがあります。そのデータベースで、私の彼女とその親友の先祖を4世代前までさかのぼって調べてみたところ、なんとその先祖同士は姉妹でした。日本でも、家系図が寺院などに記録されているかもしれませんが、こんなふうに調べることはまず難しいと思います。

 

 

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レイキャビクのレストランで出てくる「スシピザテンプラ」という謎の料理。意外と美味!

 

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同様に、太巻きを揚げたらしき“なんちゃって和食”も。これも結構、おいしい。

 

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恋人の姉がキーボードを担当しているバンドの演奏風景。アイスランドは、ビヨークなどの有名ミュージシャンも輩出している。

 

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恋人の実家でのクリスマスディナーに招かれたときの食卓。アイスランド国民は、ビールの消費量が圧倒的に多いが、赤ワインも好まれている。

 

構成/日笠由紀


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