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【アイスランド編】自由でシビアなアイスランドの労働環境

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Reported by 桜山
アイスランドを拠点としてグローバルに展開しているIT系企業に勤務。オフタイムの楽しみは、現地の友人とのバー巡り。日本から家族や友達が遊びに来た際には、大型四駆車で旅行に行くことも多い

パーティーの場では上司も部下と友達付き合い

はじめまして。桜山です。アイスランドを拠点としてグローバルに展開しているIT系企業に勤務しています。

 

同僚は、現地のアイスランド人が約7割と大多数。あとは、ドイツやロシア、日本、中国、アメリカやイギリスなど英語圏からの社員という内訳です。通常の教育を受けたアイスランド人は、全員、英語を話すスキルを身につけているので、普段のコミュニケーションは基本的に英語で行っています。

 

当社は、オンラインでのサービスを行っているため、顧客は世界中に広がっていますが、特に多いのは、アメリカ・イギリス・ドイツ・ロシア・日本といったところでしょうか。日本のお客さまが日本語での対応を望まれた場合に限り、業務で日本語を使うこともあります。

 

仕事上で一番違いを感じるのは、社内に役職の上下はあっても、それが個人間の関係には持ち込まれないという点です。日本では、上司や先輩に対しては敬意を払うのが当然であって、仕事外で付き合いがあったとしても、仕事での上下関係がそのまま持ち込まれるのが自然だと思います。しかしアイスランド、もしくは少なくとも私の会社では、相手が上司・先輩、たとえCEO(最高経営責任者)であっても、パーティーなどの場であれば友人のように話せるし、相手も友人のように振る舞ってくれるのが当たり前。上司と部下で冗談を言い合ったり、ときには部下が上司に反論したりしています。私自身は、やはりそのようなやり方には慣れてないので、直接の上司やCEO、その他上層部の人たちと話していると、つい背筋を伸ばして「Yes, Sir!」という感じになってしまいますが…。一度、平社員がCEO級の幹部にちょっぴり下品なジョークを仕掛けたことがあったのですが、驚いたことに幹部もふざけてノリノリで応じた上に、その光景が動画にまとめられて社内で配信されてしまいました。ここまでくると、日本人の私は苦笑いするしかありません。

 

1時間ごとに5分の休憩が奨励されている

私の働いている会社は、日本の一般的な会社に比べて非常に自由です。就業時間は、コアタイムが10時から16時となっていて、その間をカバーさえしていれば、8時に仕事を始めて16時に帰るシフトでも、10時に来て18時に帰るシフトでも組むことができます。期限までに仕事を納められれば、会社で仕事しようが家で作業しようが構わないという部署もありますね。また、就業時間内でも、30分の昼食休憩と1時間ごとに5分をめどとした休憩を取ることが推奨されています。自分の好きなタイミングで休憩がとれるので、その間であれば、会社のPCでゲームをしようが、会社の娯楽室で卓球やビリヤードを楽しもうが、まったくの自由。また、月に2日間までは、体調が悪いという理由で休むことも可能だし、理由があればシフトを変更するのも非常に簡単です。

 

ただし、このようにとても自由であると同時に、自己管理の責任も常に課せられています。自由に甘えて溺(おぼ)れてしまうと、その先には解雇が待っています。実際、私と同時期か、もしくは私より遅く入ってきた同じ部署の15人の同僚のうち、すでに3人が職務怠慢で解雇されています。

 

とはいえ、決して突然辞めさせられるわけではありません。業務に問題があればまず警告を受けて、その後数カ月はその改善をするためのトライアル期間となります。そこで改善が見られなければ解雇ですが、良くなればそのまま仕事を続けられます。そうした挽回のチャンスが与えられるのは2回までで、3回目の警告はすなわち解雇を意味します。解雇された3人のうちの1人は私も親しかった社員なのですが、私が見ている限り、業務態度と業務量から総合的に判断されたように思います。彼は、「最低限の業務量をこなせばいいだろう」という考えで働いていて、普段からそれ以上の仕事をしようとしませんでした。それも、毎日確実に業務をこなせればいいのですが、調子の悪い日はその日の目標を達成できないこともあり、それが積み重なったのだと思います。

 

このように、当社では、解雇に関する判断は非常にシビア。日本の会社は、基本的に規則で縛り、それに従っている限りはそうそうクビにはならないイメージがあるので、その反対と言えるかもしれません。「自由を楽しむのはいいが、楽しみながら、やることはきちんとやりましょう。そうして、社員も会社もオールハッピーに」という考えなのだと思います。そうした経営理念自体、とても好ましいと思いますし、それを会社が本気で実現しようとしているところも気に入っています。

 

加えて、日本よりも“実力主義”であることもひしひしと感じます。「有能ではないとクビになる」というほどシビアなわけではありませんが、やはり上の役職に上っていくためには、単に自分の持っている力を発揮するだけではなく、実力を発揮する機会・チャンスを自ら提案し、活躍の場を用意する必要があります。待つだけでは何も変わらないし、後から入ってきた有能な人々に抜かれていくだけ。自分から行動するのが大切なのです。

 

かく言う私も、顧客とのコミュニケーションの場を設けたり、今まで英語ユーザーのみに限定されていたプロジェクトについて、新たに日本人チームを設立しようと提案し、実現させてきました。つまり、日本語が使えるという私の強みが生かせる場所を、自分で増やすわけです。もちろん、業務量もそれに伴って増えるわけですが、そうした自発的な取り組み姿勢が見られるかどうかを、会社はシビアに評価しているように思います。

 

同僚との関係を円滑にするために、イベントやパーティーにも参加しています。会社主催のイベントは年に何度もあり、その後はたいてい飲み会に。平均的な例で言うと、1次会が20時~24時、2次会が夜中の0時~2時、3次会まで進んだときはとことん朝まで、という流れになります。私も、以前、職場の近くに住んでいたころは、朝までコースが基本でした。結婚していたり、子どもがいたりする社員は、そこまで無茶はしていません。

 

普段のコミュニケーションも非常に重要。職場では、仕事中でも、同僚同士で仕事と関係のない話をしている光景を日常的に目にします。会社側にも、社員同士のコミュニケーションを密にしようとする狙いがあるようで、冷蔵庫には缶ビールが山積みになっていて、金曜日の仕事終わりの時間帯には無料で振る舞われたりしています。休憩時の話題は、次のバカンスの予定や家族の話、天気や政治、世界情勢の話など。競合する他社の製品に関して情報交換や意見交換をしたりすることもありますね。

 

自分が非常に忙しいときだと、雑談に興じている同僚を見て、つい心の中で「さっさと仕事に戻れ!」と毒づいてしまうこともありますが、こういう何気ない会話をすることで、仕事上でのストレスを発散できているのも事実。さらに、自分が業務で抱えている問題に対して、別の観点からの意見を言ってもらうこともできるので、結果的には仕事をする上でも大いに役立っていると言えるでしょう。

 

 

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アイスランドの首都レイキャビクのメインストリート。夜は酔っぱらいであふれる。

 

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レイキャビクの街中では、ストリートアートがなかなか面白い。

 

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ユニークな造形の建物も目につくレイキャビクの街角。

 

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アイスランドの伝統的な夕食の光景。現地の料理は、日本人である私にとっては、酸っぱいかしょっぱいか味が薄いかで正直苦手かも…。

 

構成/日笠由紀


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